
Dr.加納 拓
自己紹介
ふとしたきっかけから、歯科を志し、長崎の地で学んだ学生時代、決して優秀とはいえない学生だったと思います。大学時代は野球部に所属し、仲間たちとともに汗を流していました。この時培った仲間と体力は、今でもおおきな財産です。
そんな勉強とはかけ離れた大学生活も5年生をすぎると変わってきました。それまでの基礎医学を中心とした座学から、実際に患者様を目の前にする臨床医学へと進んだからです。私自身どんなに未熟であろうと、患者様からは先生と呼ばれるようになり、自分は本当に歯医者になるんだ、ということを実感し始めたのはこの頃からだと思います。
そして幸運にも歯科医師国家試験に合格し、はれて歯科医師となり、研修医として大学病院勤務となりました。
学生生活が長かった分、早く働き、一人前になりたいという気持ちから半年間長崎県の開業医の先生のもとで勤務できる研修コースを選択しました。そこで大学では教えてもらえなかった、かかりつけ医としての地域医療の在り方、患者様とのコミニケーションの大切さ、すべてが初めてのことでした。自分の未熟さから様々な苦労はありましたが、私の歯科医師人生において大変貴重な時間を過ごさせて頂きました。
その後大学へと戻り、お世話になった院長のアドバイスから大学院への進学を決め、補綴科への入局を許していただきました。一度開業医での経験をさせていただいたおかげで、また違った視点から大学を視ることができました。そこでは、歯科材料に関する研究、そしてそれに関わる臨床、診療後も毎日日付の変わるまで研究室にこもっていました。
研究だけではありません。長崎という土地特有であると思いますが、1週間におよぶ離島診療、またアメリカへの留学と大変貴重な経験を多くさせてもらいました。
様々な先生方と関わり、お話しさせていただく中で、歯科は歯科医学であり学問、生涯学者でなければならない。そのため、どんな形であれ歯科医療に携わるからには一生勉強という気持ちが強く残りました。大学という学ぶには最高の環境の中で多くの時間を過ごすことができ、そして自分が学んだことを学生にも伝えることができる。そのような教育の機会にも恵まれ、大変充実した時間を過ごすことができました。
そのような生活を送るなかで、もっと長く、そして深く臨床にかかわりたいと思い、長崎を離れ福岡へ参りました。
患者様への思い
歯科治療において最も大切なこと、それは診断です。私の携わった方々が、良好な状態を長期間維持し、生涯自分自身の歯で食事をおいしく食べられるために、的確な診断を行うこと。そしてそれに基づき治療計画をたて、個々の状況や環境の変化、起こりえる問題点の予測と対策の準備も踏まえながら治療を行い、さらに治療後の予防プログラムまで実践することで歯科医療は成り立ちます。
EBM(Evidence Based Medicine)という言葉があります。一昔前は歯医者といえば腕一本のどちらかといえば職人に近い世界であったかもしれません。今でもそれにかわりはありませんが、科学的根拠に基づいた治療は、ある程度確立されています。虫歯の痛みをとるには?美しい口元を作るには?すべてにおいて治療にはルールがあります。それらを分かりやすく説明し、親身になって、今この方には何がベストなのか、何を望んでいるのか、そこを一緒に考えていくことが必要です。近年新しい治療法や治療機器が次々と生まれていますが、最新治療がよい治療とは限りません。当然ですが、その人によって最善の治療法、治療機器は異なります。私はさまざま提案をしますが、最後に決めて頂くのは患者様です。
治療へのこだわり
虫歯治療
虫歯は、口の中の細菌が歯を溶かしてしまう状態を言います。この虫歯菌は糖分を好み口の中に入った糖分を食べ、代わりに酸を出します。この出された酸によって歯が溶けて虫歯になります。更に進行すると患部に細菌の塊が繁殖し、虫歯が拡大してしまいます。
虫歯に関する研究や接着の治療技術が進んだ今、我々が取り組んでいるのは、歯のダメージを最小限に抑え、極力歯を温存する治療です。昔はごく小さな虫歯であっても、虫歯の部分だけでなく、そのまわりにある歯の健康な部分まで削り、金属をつめるというものでした。その結果、治療のたびに健康な歯が失われ、次いで歯の神経を取らなければならず、最終的には歯を抜く結果となることが多くありました。現在の治療技術では初期の虫歯において、健康な歯まで削ることはまずありません。ただし虫歯は取り除かなければなりません。歯を守るためにも早期発見・早期治療、それを可能にする予防処置が大切です。
歯周病治療
歯周病は35歳~44歳の人ではおよそ85%、45歳~54歳では約90%の人が罹患していると言われています。一般的には歯茎の病気として認識されていますが、その根本は、歯茎の下にある骨の病気です。
歯周病は沈黙の病です。初期の段階であれば比較的簡単な処置で良好な状態を保てますが、自覚症状が少ないため、重度になって治療介入する場合がほとんどです。それぞれの患者様の進行の度合いと処置の目的等によって様々な治療方法があり、それを適切に選択しなくてはならず、病態によって治療メニューが決まります。しかしながらどんなに適切かつ専門性の高い治療を行ったとしても初期の段階での治療介入に比べ、条件は悪くなってしまいます。そのためにも早期発見、早期治療を原則に良好な状態を継続していくための予防に重点を置いて治療を行っていきます。
審美歯科治療
審美とは見た目だけでの問題ではありません。歯並びを治し、噛み合わせを正しくする。美しいものは機能的です。その機能的な面と、美的な面の両面にあうよう適切な診断を行い、 口元の健康 を求めていくこと。それこそが私の中の審美歯科です。その中でトータルな美をつくるひとつの手段として歯科治療を位置づけ、 歯を白くする 、 歯や歯茎の形を整える 、 歯並びを改善する など、美しい自然な口元づくりのために力を注いでいます。
よく審美歯科治療=セラミックという言葉でおきかえられます。セラミックにおいても近年さまざまな種類が開発されています。ひとえにセラミックといえども、その性質は多種多様であり、それぞれの症例に応じた適応というものあります。強度や色合いなど、それぞれに特徴があるため、ケースに応じて適切な診断を行い、最良なものを選択していきます。
インプラント治療
私は6年間の大学勤務の中で、補綴科という被せ物や義歯、咬みあわせ専門の科に所属しておりました。一言で歯科といっても、医科と同様さまざまな診療科目があります。お腹が痛くなって眼科へ行く人はいないと思います。補綴科の特徴は、単に歯の無くなったところに差し歯や義歯等で補うことではなく、最終ゴールを見据えた診断とそれによる治療の舵取りを行うことにあります。そのため最も得意な治療も、審美歯科治療や咬み合わせの治療です。大学病院の短い診療時間ではありましたが、研究と学生教育の時間以外は、専門治療のみ月に100件ほどの診療を行っておりました。もちろんその中には、セラミックスを使用した審美歯科治療やインプラントを使用した咬合再建治療も含まれています。