顔のコリ(梅干ししわ)
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顔のコリ(梅干ししわ)
顎の先端にできる有名なしわの1つに「梅干し」があります。
顎先にできる「梅干ししわ」実は「シワ」ではなく顔のコリによる筋肉のちからこぶです。
梅干ししわが実際にはしわではなく、力こぶであることはあまり知られていません。
これは、あご先に何らかの力がかかる現象が無意識のうちに繰り返されている現象です。顎が後ろに下がって見えてしまい、あごに影が出来て、フェイスラインがくっきりしない。
見た目が悪いばかりではなく、顔のコリ、口角の下垂も同時に起こっているのに、自分自身ではなかなか気が付かない症状です。あご先の梅干しの原因のそのほとんどは、かみ合わせの異常、顎の位置の異常に関係している顔のコリです。
適応症
顔のコリは患者様の本人の自覚が少ない。梅干し症状の診断は、セファログラムによる分析が参考になる。
上下顎前突、口ごぼ、バイマキシラリープロトルージョンの患者は症状が発現し易い。頭蓋骨に対する顎骨の位置関係、下顎の大きさ(小下顎症)は歯列矯正の抜歯した矯正中や矯正治療後にも出現する。
咬合高径の低下している患者や遊離端欠損症例にも有効な治療方法である。
治療に必要な人体解剖、筋肉の走行、筋肉を支配する神経
原因筋であるオトガイ筋は、あご先を上下方向に走行する小さな筋肉である。
下顎骨前方、下顎側切歯の歯槽隆起、オトガイ結節から起こり、下唇下制筋に被われ、一部は口輪筋の深部にあり、オトガイの皮膚、口腔粘膜に付着する。下唇下制筋、口角下制筋とともに協調して動く。
オトガイにしわを作ったり、下口唇をとがらせたり、下口唇中央部を持ち上げたり、下口唇側方を下制する役目がある。口角を下垂させる作用もある。口角挙筋、大頬骨筋、上唇挙筋が拮抗筋である。
顔のコリ(梅干ししわ)の治療計画
顔のコリとしてのオトガイ筋の過剰収縮、過剰緊張状態に対して、噛み合わせの状態と顔の骨の状態、顔の筋肉のコリ状態の包括的な診断をおこない治療計画を検討する。
カンファークリニックでは、BTX-A治療によって活動筋の緊張緩和を取り除く程度の製剤濃度を適応している。顔のコリが解消され緊張緩和されたオトガイ部分の皮膚は、スムースな面が現れ、フェイスライン、下顎骨ラインが明瞭に改善される。
頭蓋顎顔面の骨形態や、咬合、顎関節に異常を認める場合には、異常原因が取り除かれるまでは、再発を繰り返し、半永久的な注射が必要になる点を患者様に説明している。治療はBTXを左右オトガイ筋の筋束に直接注射する。口輪筋、下唇下制筋に対して注射、浸潤を避ける。
副作用 |
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併用療法、 関連領域 |
上下顎前突治療、オトガイ形成、上下顎水平的、垂直的顎間関係改善。義歯、遊離端欠損。 |
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顔のコリ(梅干ししわ)の治療の流れ
1. 注射部位のマーキング
注射に際して注射部位を把握する。必要かつ安全な領域を図示する。下顎骨のライン(フェイスライン)を図示する。下口唇の赤唇部分を図示する。刺入、注入は赤唇縁から最低でも10mm以上、下方に設定する。口輪筋を図示する。オトガイ筋を図示する。
触診によるオトガイ筋のスパスム、MPD症状の強い部位を把握する。患者様にオトガイ部に力を入れるか、口唇を前に突き出すように指示をすると、オトガイ筋の緊張によるこぶ状の凹凸が出現する。
力こぶに沿ってできるしわ線を観察し、オトガイ筋の起始と停止を確認し、注射部位を図示する。
2. デザイン
オトガイ筋は下顎歯槽部から起始し、オトガイ部分の皮膚や口腔粘膜に向かう。下顎骨下縁とオトガイ結節を明示したのち、下顎骨にもっとも近くこぶができる部位に2ヵ所、下口唇の下方で、オトガイ唇溝付近の膨らみができる上端部2ヵ所、注射部位を図示する。下顎骨に近い部位を底辺にした台形をイメージする。下唇下制筋、口角下制筋の強さ、範囲、連動の影響程度は術者の経験による。
3. 冷罨法
注射の際の痛みの軽減のために、患部の冷却とクリームとシールの表面麻酔をおこなう。
4. 消毒
術野の消毒を行う。刺入点を中心に同心円状に消毒する。
5. 刺入、注入、注入深度
マーキングした4ヵ所に各0.1mL(2.5単位)ずつ合計0.4mLの10単位を注射する。針のカット面は上向きにする。使用する針は34G、6~8㎜を使用する。刺入する角度は皮膚に対して垂直に刺入する。
患者にオトガイ筋を収縮、弛緩してもらい、マーキングした部位のオトガイ筋を皮膚ごと一緒にしっかりとつまむ。
オトガイ筋の上部であれば、該当部位の口腔粘膜を指で支えて皮膚を伸展することもでき、貫通の予防にもなる。刺入深度は個体差があるが、6㎜の針を使用する場合は、針がすべて刺入された状態まで刺入する。
6. 術後冷罨法
術後の内出血の予防と疼痛の軽減に有益である。
顔のコリ(梅干ししわ)の治療に際して注意する解剖組織
■ 下唇下制筋
■ 口輪筋
■ 口角下制筋
■ オトガイ神経
■ 下唇動静脈
顔のコリ(梅干ししわ)に関するコラム
顔のコリと口腔機能異常による口唇・オトガイ筋の変形
口唇が「への字型」に変形するのは、顔のコリの症状として両頬のたるみや下垂、オトガイ筋の過剰な収縮運動だが、両頬を下垂した原因、オトガイ筋の過度な緊張を起こしている原因の1つには口腔機能が影響しており、①咬合高径の低下②欠損歯の放置③咬合関係の異常などが考えられる。
Mental creaseやpebbly chinの出現も、顔のコリであり、オトガイ筋の拘縮が原因であるが歯科補綴学的な咬合高径の低下や抜歯矯正治療における口腔容積の減少、歯槽骨と下顎骨骨体部分の解剖学的な位置の変化に起因する筋肉の過緊張症状としてとらえることが出来る。
口周囲筋へのBTX注入における注意点と適正量について
近傍の口輪筋、下唇下制筋にBTXが及ぶと食物残渣の原因になるので注意が必要である。オトガイ筋は非常に薄い表情筋であり、皮筋である。下唇下制筋、口輪筋に被われている。
オトガイ筋は口輪筋や周囲筋と複雑に絡み合っているので、部位以外への薬剤の漏出は、近傍筋の筋力低下につながる。図示した部位への適切で必要最小限の注入量を注射するように心がける。