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アゴのコリ(側頭筋)

側頭筋の治療概要

頭痛として自覚する症状の中には、顎の筋肉のコリが原因の場合がある。頭の側面を扇型に埋めている側頭筋が原因筋である。頭痛の一部の症状の中には、この側頭筋のスパスム(筋肉や筋膜の痙攣)やMPD(筋膜のハリやコリ)が相当の頻度で隠れている。
このような症状には側頭筋に対するBTX治療は有益である。咬筋に筋肉の始まり(起始部分)と筋肉の終わり(停止部分)があるように、側頭筋にも起始部分と停止部分がある。

側頭筋は停止する部分は下顎骨の筋突起という、頬骨の裏側の深層部分にあるので、注射する部位としては、第一選択にはならず、側頭筋の起始部分にBTXを適応する。側頭筋は、頭の側面を扇形に埋めている。扇形の外側の起始部分に注射する。

側頭筋の注射は、眼瞼の下垂や側頭部痛、こめかみの陥凹や側頭部のあごのコリがある場合や、あごのコリが咬筋の注射だけでは症状が治まらない場合、咬筋のあごのコリが治まっても、側頭筋に症状が変化してしまった場合、側頭筋へのBTX治療を推奨している。側頭筋のコリは頭痛として症状を自覚する場合がおおい。

側頭筋に対する治療適応

顎コリ、歯ぎしり、食いしばり、ブラキシズム、クレンチング症状に対するBTX治療は、手技の簡便さ、容易さ、改善度を考えると咬筋への応用が第一選択といえる。ただし、MPD症状やスパスムが側頭筋に存在する場合には側頭筋が第一選択となる。

咬筋への注射後、咬筋のスパスムやMPD症状が緩和された後に、顎コリの症状がある場合には、他の咀嚼筋や顔面筋、周囲筋のスパスムやMPDを診察する。側頭筋に症状がある場合には、第一選択とする。

側頭筋治療に必要な解剖構造

側頭筋は骨格筋である。骨格筋は骨から始まって骨に終わる筋肉である。噛むためにある咀嚼筋の中でも口を閉じる、噛みしめるために働く閉口筋である。この筋肉は左右の筋肉が同時に、しかも両側が一緒に運動する、人間の体の中で「特殊」な動きをする筋肉の1つである。

側頭筋の機能は咬筋や内側翼突筋と一緒に下あごを引き上げ、噛みしめて咀嚼する。側頭筋は2つの層に分かれており、浅い層(浅葉)と深い層(深葉)の2層がある。咬筋と同じく、筋肉を包む膜(筋膜)によって各層は隔たれていて、薬剤を適切に注射しなければ、それぞれの層に浸透しない。側頭筋は頭のこめかみ近くの側頭窩全体に広がり、分布している。

そして、側頭麟外面と側頭筋膜深葉の内面から始まり、下前方に向かって下顎骨の筋突起に強固に付着する。この筋肉の分布によって主に下あごを上に持ち上げるために動く。ただし、筋肉の後ろの部分は、下アゴを後方に引く役割を担っている。
支配神経は三叉神経、深側頭神経です。

側頭筋の治療計画

BTX-Aを使用した側頭筋に対する治療は、顎コリ、TCH、食いしばり、歯ぎしり、ブラキシズム、クレンチングなどの症状に対する症状を緩和するために治療方法である。側頭筋を第一選択にする場合の主な症状は、頭痛を伴った側頭筋膜のスパスム(コリ)とMPD(痛み、頭痛)である。頭痛症状が頭の中の原因である内因性の場合は、BTX治療を第一選択とすることなく、内科専門医や頭痛外来と連携する。

BTXを側頭筋に注射することで、顎コリ、食いしばり、ブラキシズム、歯ぎしり、クレンチングの症状が改善し、側頭筋のスパスム(筋肉や筋膜の痙攣)による頭痛の軽減、MPD症状(筋膜のハリやコリ)の緩和、改善が出来る。

BTXは濃度に比例してよく効く濃度依存的な薬剤である。側頭筋の注射は、小顔、顎コリ、口腔習癖(TCH)食いしばり、歯ぎしり、ブラキシズム、クレンチングなどの患者様のご希望や症状に適した濃度を用いることが治療の成功を導くカギになる。

副作用

側頭筋の注射で最も気を付けなければならない解剖学的な部位は、針を刺す部分にある、浅側頭動脈という血管である。 注射後の一時的な併発症状には、注入部位の圧痛や血腫、咀嚼力の低下や開口障害(口が開けにくい)、閉口障害(口が閉じにくい)、噛みにくさ(咬合不正)、咀嚼後の疲れ(筋肉疲労)などがある。ただし、適切な注射をおこなえば、これらの症状の発現頻度はとても少ない。

この他の副作用として、薬剤の周囲の筋肉への漏れが、不自然な表情を作ったり、唾液腺に漏れると、口渇(お口の渇き)を発現する場合もある。注射する部位と濃度は細心の注意が必要といえる。過剰な濃度を注射すると、日常生活に多大な支障をきたす。

噛んだり、かみ砕いたり、すりつぶしたりする咀嚼機能の低下や、嚥下(飲み込む)、発音に支障がでる。周囲筋への漏れは、顔の表情を不自然にし、唾液腺である耳下腺への漏れは、口渇を引き起こす。このように側頭筋以外の不適切な部位への注射や、過剰なマッサージは思いもよらない薬剤の浸潤、拡散につながる。

これらの症状を発現させないためにも、治療後の注意は守り、周囲筋への漏出がないように細心の注意が必要と言える。

併用療法、
関連領域

歯科補綴物への過重負担緩和療法、インプラント即時加重治療における過重負担軽減療法、歯周病治療期間中の動揺歯の過重負担軽減療法

側頭筋治療の流れ

1. デザインと刺入点を把握する

原因となっている筋肉の図示をおこない、注射する製剤が目的の筋肉以外に漏れないように確認をおこなう。筋肉や靭帯、血管や神経をマーキングし、図示したのち、針を刺す位置を決定する。最も痛くなく、最も効果的な注射位置を検討する。

2. 注射部位のマーキング

注射に際して安全な領域を図示する。眉毛(眉尻)を目安にして、側頭筋と前頭骨の境界にのマーキングをおこなう。前頭骨と側頭筋頭頂部の境界をマーキングする。側頭部を触診しながら、患者様に協力を頂き、奥歯で咬みしめてもらうと、側頭筋が盛り上がり、筋肉動きを触知することが出来る。

動かない部分が前頭骨の骨であり、側頭筋と前頭骨の境界をマーキングする。側頭筋のマーキングの目安を、小鼻と目じりの延長線上に簡略化する方法もある。薬剤の注入は側頭筋の筋腹におこなう。

3. 冷罨法と表面麻酔

注射の痛みの軽減のために、注射する部分に表面麻酔をおこなう。表面麻酔はクリームのタイプの軟膏とシールタイプのテープがある。ダブルの表面麻酔で針を刺す時の痛みすらない。また、注射する部分をアイスパックで冷やす。冷やすことで内出血の予防に役立つ。

4. 消毒

注射する部分の術野の消毒を行う。BTXの薬剤効果を最大限に発揮させるためにアルコール含有の消毒薬は使用しない。消毒薬にアレルギーがある患者様は事前に問診にて把握する。

5. 刺入、注入、注入深度

針の切れが良く、痛みが軽減されるので、針のカット面は上向きにして、刺入する。側頭筋の形に添って扇型に5ヵ所に注射する。それぞれの部位に各0.2mL(5単位)ずつ合計1mLの25単位を注射をおこなう。
針は34G、8㎜を使用しているため、痛みを感じることはない。刺入する角度は皮膚に対して45~90°を保持する。
刺入深度は、8㎜の針を半分ほど刺入し、側頭筋の筋腹の中間に針先を位置させる。その状態から注入を開始する。

刺入の際は、患者様にご協力を頂き、奥歯で咬みしめてもらったうえで、マーキングした部位をしっかりと伸展して、把持する。他の部分への薬剤の漏出、痛みのない適切な注射をおこなうことが出来る。

側頭筋は側頭筋浅葉、側頭筋深葉に分かれている。両方の層にまんべんなく注入することが、最大の効果を発揮する治療につながる。側頭筋注射に際しては、浅側頭動静脈に注意する必要がある。

6. 冷罨法

注射治療後は患部を冷やすことで、内出血の予防や、痛みの予防に効果がある。

側頭筋注射に際して注意する解剖組織

■ 顔面神経側頭枝
■ 浅側頭動静脈

アゴのコリ(側頭筋)に関するコラム

口もと審美

これまでの歯科医院でおこなってきた審美歯科治療はオールセラミッククラウンなどのキレイなかぶせ物、デンタルインプラントは入れ歯の代わりの歯、歯のホワイトニングなど、おもに「歯そのもののきれいさ」としての口の中の美容でした。つまり、口を開いたときに見える一瞬の状態や、笑ったときに間接的、一時的に見える「瞬間の美容」でした。これらの概念はエステティックゾーン(審美的な治療をとくに注意する部位)としてのとらえ方といえます。

また、治療対象も歯だけでした。ところが、歯の白さは唇の色や形に大きく影響しますし、入れ歯やかぶせ物などのかみ合わせは、フェイスラインに大きく影響します。

顎の関節の動きはお顔のゆがみや、たるみ、しわの原因になります。お顔の軟部組織としてのお鼻、くちびる、頬、フェイスラインと切っても切り離せないことが美容分野でもわかってきました。欧米では歯科医院でおこなう顔面美容治療は当たり前の治療です。

口もと周囲の加齢的な変化、しわやたるみの原因は、単純な老化現象では説明できません。皮膚組織の老化、表情筋の老化による脂肪組織の減少や下垂などが複雑に絡み合い、さらに最も重要である口腔機能の低下や咬合関係の異常がそれらの症状を増強し、局所の代謝活性の低下や表情筋のサルコペニア、脂肪分画(コンパートメント)の乱れなどを助長します。

下顔面、口もと周囲のBTX治療を成功に導くためには、解剖学的な構造と、顎口腔顔面の機能的な役割を熟知し、見た目に影響する顎と顔の領域における適応症や、顎顔面口腔外科領域特有の診察方法、診断技法を駆使し、標的とする筋肉に対して、適正な注射濃度、注射深度を体得する必要がある。

単純な加齢現象として、該当部位の組織の萎縮、下垂、拘縮のみを判断基準にすることは、カンファークリニックで行うBTX治療としては、適切ではないと考えています。とくに中顔面、下顔面の整容学的な症状は、口腔機能と密接に関連しています。機能性と整容性を融合させた「美容再建」治療は、美しい顔の形態と顎顔面の機能の調和が大切です。

カンファークリニックのこだわり

鼻唇溝、マリオネットライン、首の横しわなどは、
口腔機能の低下が最も大きく関係しています

抜歯をおこなう矯正歯科治療も、顔の見た目を大きく変化させます。奥歯が抜けたままの状態であれば、顔は非対称になります。口の機能と顔の見た目の改善は一緒に考えるべき治療です。

カンファークリニックでは、小顔処置では、手術による下顎角切除(エラ削り)や咬筋切除手術や咬筋へのBTX注射をおこなっています。頬の脂肪が原因の場合には脂肪吸引手術やメソセラピー療法としての脂肪溶解治療を行っています。

また、矯正歯科治療後のあご先の梅干しや、顎関節症のⅠ型である、咬筋や側頭筋の顎コリMPD症状の緩和、歯ぎしりや食いしばり、クレンチングやブラキシズム、整容的なガミースマイル治療もおこなっています。骨や歯の治療を行うだけでなく、筋肉や脂肪、皮膚などを含めて左右が均等な自然な顔の状態、美しい状態に戻すことまでがカンファ―クリニックの考える治療です。

カンファークリニックの美容歯科診療