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上顎分節骨切り術【出っ歯セットバック手術】

上顎分節骨切り術とは

上顎の形態改善、咬合機能の維持、向上を同時に図るための上顎骨歯槽骨部分の手術です。

可動骨片を主に後方移動を図ることにおり、顔貌、外鼻形態、E-Lineの改善をおこなうことができます。上顎分節骨切り術は上顎左右第一小臼歯の抜歯と歯を支えている歯槽骨を切離離断することで後方移動に必要なスペースの確保をおこなう術式です。スペースを利用して前歯6本分の歯槽骨を後退させ、顔貌形態の改善、咬合機能の維持、増進を図ることができます。通常の歯列矯正と比較されることが多いが、その目的、結果は大きく異なります。

また、歯列矯正治療では2~3年要し、歯の傾斜移動によって空隙の改善をおこなうのみであり、仕上がりは顔貌の改善とは言えません。分節骨切り術であるセットバック手術は短時間で美しく改善することができる術式と言えます。手術においては上顎形態のみを考えるのではなく、額~鼻~口元~顎先までのバランスの診断、術前の頭部エックス線規格レントゲン、セファロの分析、咬合模型による嚙み合わせ診断を基に、デサインを行ない詳細な治療方針が重要です。

上顎分節骨切り術について

骨格性上顎前突で、臼歯部の咬合関係を変化させる必要のない症例に対して適応しています。切開方法や剥離方法によってWassmund法、Wunderer法、Bell法(Downfracture法)の術式があるが、基本的な手術方法はおおむね同じです。患者様の症状や状態に応じて術式を選択します。

いずれの方法も、第一小臼歯または、第二小臼歯部分の歯槽骨の切離、離断と抜歯をおこないます。後方移動に必要な歯槽部の隙間を形成し、この隙間を利用して上顎歯槽部前方骨片の後方移動をおこないます。手術は唇側歯槽突起基部から梨状孔に向かう骨切除または骨切離。鼻中隔下部の骨切り、骨切除。口蓋骨の骨切除、骨切離をおこないます。切離された上顎骨は前方、後方、上方への移動が可能となります。

Wassmund法は唇側ならびに口蓋側の骨切りの際に骨膜をトンネル状に骨膜下剥離をおこない、術野を展開するが、Wunderer法では、口蓋骨膜粘膜を横断的に切開し、剥離をおこない、術野を確保します。Bell法では前方から直視下に口蓋骨を視認できるため、口蓋粘膜の手術操作が不要です。

上顎分節骨切り術のポイント

歯列矯正では通常1~2年がかかるが、
上顎分節骨切り術は1日で出っ歯を治すことができる施術です。

ここで、出っ歯を抜歯して歯列矯正のみで引っ込めようとした場合、抜歯した隙間に前歯を倒す方法をおこなうため、セットバック手術と似ているように思い、比較をされがちであるが、結果、効果は全く異なる。抜歯して歯列矯正で歯を内側に倒すと、横顔のラインに対する歯の角度(歯軸傾斜)がなくなり、歯、歯槽骨、上顎骨、顔面骨のバランスが悪くなります。分節骨切り術では、歯槽骨切除をおこない上顎骨・下顎骨の最前部を後方に移動させるので、横顔のE-Lineイーラインに対する歯の角度はは自然な角度を保ち、顔面に対する自然な口もとになります。

出っ歯改善セットバック手術は、骨格性出っ歯に適応している。

ガミースマイルの改善、梅干ししわの改善、E-Lineの改善をおこない、美しい口もとを目指すことができる。歯軸傾斜の角度変更は手術によって改善可能な範囲と歯列矯正によって可能な範囲があります。

カンファークリニックでは上顎歯槽骨分節骨切り手術とともに、歯列矯正、鼻尖形成術、鼻中隔延長、オトガイ形成などを組み合わせ、E-lineの改善、鼻と顎と口もとのバランスに配慮した施術を行っています。術式の選択は経験を積んだ医師の判断を参考にして頂き、カウンセリングで一緒に検討しています。

上顎分節骨切り術(セットバック手術)の補足
1)鼻翼縮小
上顎骨後方移動術に伴う鼻翼拡大防止のため、絹糸、ナイロン糸、吸収糸を用いて、前鼻棘(ANS)、鼻翼基部に糸を通過させて引き寄せる症例もある。この場合は、鼻翼縮小だけでなく、鼻中隔延長や鼻尖形成などを術野の許す範囲で併用している。

2)上顎歯槽骨分節骨切り後方移動術による形態変化
鼻翼の拡大、口裂閉鎖不全、上顎歯列の露出、ガミースマイル、開咬など顔貌における上顎の突出感を機能的、整容的に改善できる。上顎骨前方部をあらゆる方向に移動できるため、手術の適応範囲は広い。とくに上顎骨前方部の後方移動や上方移動に優れた術式であり、理想的な形態の変化を提供できる。術後の後戻り、再発、経時的形態変化は発生せず、良好な結果が得られる。手術の良し悪しは術者の経験によるところが大きい。

3)本術式の欠点
A, 組織の壊死
いずれの術式も軟組織の操作が良好であり、血管丙の損傷がなく血行が保たれているならば、歯や骨の硬組織、歯肉、筋肉、靭帯、粘膜などの軟組織の壊死、脱落、喪失などの重篤な合併症は少ないが、骨壊死、歯の脱落、喪失の報告がある。術者の経験によるところが多い。
B, 出血
手術中には盲目的(ブラインド)手術操作が必要である。術中出血には十分な注意が必要である。
C, 歯の失活
歯髄反応は術後6か月以内では1割程度とされているが、8割以上が自然治癒する。
D, 抜歯部位の隙間
手術は上顎歯槽骨、上顎顎骨に対して行われる。歯の手術ではない。そのため、1mm程度の隙間が生じることがある。歯の隙間に対しては、部分矯正、小矯正、審美補綴、セラミック矯正、歯列矯正、歯並び治療、インビザライン、キレイライン、マウスピース矯正など各種治療方法を推奨する。
E, 鼻翼幅の拡大
梨状孔で鼻粘膜を剥離するため、鼻翼幅の拡大を招来する場合がある。術中判断により、対応が可能である。
F, 上口唇の形態変化
出っ歯、上顎前突の患者は、上口唇歯や骨によって押し出された形態となり、唇が引き延ばされていることが多い。これは口唇が厚いのではなく単純に引き延ばされた状態である。手術後はこの状態が変化し、欠点ではないが術後の形態は唇が小さく、薄く、いわゆる「おちょぼ口」になる。多くの患者はこのような突き出た口もとの改善を希望し、本手術を適応している。

上顎分節骨切り術がおすすめの方

  • 骨格性出っ歯
  • 骨格性上顎前突
  • 上下顎前突
  • 口ごぼ症状
  • 梅干ししわ
  • 笑った時に見える歯茎を治したい方
  • ガミースマイル
  • 突き出た口もとの改善
  • 歯列矯正をしないで前歯をひっこめたい
  • E-Lineを整えたい

上顎分節骨切り術の概要

施術時間 約60分
治療期間 日帰り
麻酔 全身麻酔
ダウンタイム 大まかな腫れや内出血が引いてくるまでに、2~3週間程度です。
組織が完全に落ち着くまでは3ヶ月~6ヶ月程度です。
※いずれも個人差があります。
費用 1,500,000円(税抜)

上顎分節骨切り術で期待できる効果

  • E-Lineの改善
  • 骨格的な出っ歯の改善
  • 口元が引っ込む
  • 開咬(オープンバイト)の改善
  • 口もとが上品になる
  • 短期間で出っ歯を治せる
  • 前歯のかみ合わせの改善
  • 矯正歯科治療ではならなかった口もとの改善

上顎分節骨切り術の流れ「 Wunderer法 」

Wunderer法の特徴は、唇側の粘膜骨膜弁を血管丙とし口蓋粘膜を水平に切開するため、可動骨片である、上顎骨前方部分を前上方に反転、翻転させ口蓋骨を鼻腔側から観察できるので、口蓋部分、鼻腔部分のトリミングをおこないやすく、歯列拡大における骨片の分割も容易である。

1. デザイン

モデルサージェリー、CBCTによる診断、光学模型による手術シミュレーションをおこない移動する範囲、移動によって変化する顔貌、咬合を決定します。神経、血管の走行に留意してデザインをおこないます。

2. 麻酔

全身麻酔下において、上顎左右第二小臼歯間の唇側、口蓋側粘膜に対して、歯科用キシロカインカートリッジ(2%リドカイン、1/8万エピネフリン含有)を使用して局所麻酔をおこなう。

3. 抜歯

第一小臼歯(第二小臼歯または第一第二小臼歯の両歯の場合もある)をヘーベルまたは鉗子にて抜歯をおこなう。

4. 切開

抜歯した歯の歯冠歯肉中央部から歯肉唇頬移行部に対して15番メスを用いて垂直方向に切開をおこなう。この時、頬側歯肉、粘膜の縦切開は骨切離、骨切除予定位置よりも後方でおこない、切開部分の歯肉、粘膜と骨切除後の骨接合部分の位置を一致させてはならない。また、縦切開を垂直としないで、後上方におこない口唇動脈から流入する血管丙を生かし、頬側軟組織茎を最大限に活用する。

5. 剥離

切開部に骨膜剥離子、粘膜剥離子(エレバトリウム、ラスパトリウム併用)を挿入し、粘膜骨膜弁として術野の形成、剥離、伸展をおこなう。剥離範囲は上方は隣在歯の歯根尖付近までとし、内方は梨状孔を明示したのち、梨状孔外縁に沿って鼻腔粘膜の一部を剥離し、鼻腔底粘膜も一部剥離をおこなう。同部の剥離は骨膜下にトンネル状におこなう。

6. 骨切離

モデルサージェリーによって得られている骨切除予定範囲に沿って、骨切離をおこなう。骨切離には、サジタルソウ、オシレーティングソウ、レシプロケーティングソウ、ストレートバー(エッグ、ラウンド、リンデマン、カッティングバー、フィッシャーバーなどを併用)を使用する。生理食塩水を注水下に歯槽骨を口蓋骨面まで縦に近遠心部位に2線の骨切離をおこなう。(骨切除予定部位)縦の骨切離の際には、口蓋側粘膜の損傷を避ける。

7. 骨切離の延長

2線の歯槽部の骨切り線基底部がおおよそ、歯槽骨基底部にあたる。歯槽骨基底部から梨状孔外縁まで骨膜下に粘膜骨膜弁として形成したflapを、細谷氏金鈎や万能鈎、自在鈎を用いて骨面を露出させる。

同時に金鈎の挿入位置、方向、角度は重要であり、骨面を露出させるだけではなく、骨バーによる軟部組織の損傷を図るため、予定骨切り線に沿った位置に金鈎を挿入すれば、被覆軟部組織の損傷や鼻腔粘膜の損傷を防ぐプロテクターの役割も果たすことができる。視界は不良だが、術野が確保できたならば、Lindemannバーやラウンドバー、サジタル、オシレーティングなどのボーンソウを用いて歯槽骨基底部から梨状孔外縁まで水平的な骨切離をおこなう。

8. 骨切除

歯槽骨部分から梨状孔までの骨切離が終了すると、抜歯窩の近遠心に骨切りをおこなった唇側、口蓋側の歯槽突起は可動化する。パノラマレントゲンやCTなどの術前検査によって、骨切除予定位置と上顎洞隔壁との位置関係を確認しておき、上顎洞粘膜を可及的に温存できるよう、可動骨片を一塊(エンブロック)として慎重に骨切除する。この操作により、唇側歯槽骨壁、口蓋側歯槽骨壁は切除され、正中口蓋縫合部周囲骨のみが残ることになる。

9. 口蓋骨の離断

口蓋骨切除予定位置よりも前方で切歯乳頭から後方の位置に口蓋粘膜ならびに骨膜に水平的左右横断的な切開を15番メスを用いておこなう。切歯乳頭を傷つけないように注意する。切歯管からの血液供給を妨げてはならない。また、骨切り線、骨切除線と粘膜切開線が重なると、創傷治癒の遅延を招き、前後方向の骨接合面に瘢痕組織の介在の原因となる。また、この瘢痕組織が骨片の離開や下方変位を招来し、ガミースマイルや過蓋咬合の原因となるので注意が必要である。切開の形状は前方に弧状切開をおこなうことで、口蓋粘膜骨膜弁を厚く確保することができる。口蓋弁の縫合が行い易く、骨切除部と切開線が一致しないなど、利点は大きい。

切開した後は、切開部より、骨膜剥離子と軟膜剥離子を挿入し、粘膜骨膜弁として口蓋骨を骨切離に必要な範囲のみ剥離、反転をおこなう。口蓋粘膜は咀嚼粘膜であり、固有粘膜であるため、骨面とタイトに密着しており、伸展はしない。注意深く剥離をおこなわなければ、粘膜の損傷をきたし、縫合をおこないにくくするばかりでなく、口蓋粘膜の壊死、引いては口蓋骨の壊死、可動骨片の壊死を招来する。

口蓋骨面を露出させ、正中口蓋縫合部が確認できたなら、口蓋骨の切除予定位置にマーキングをおこなう。骨切りは後方に向かってややV字を描くようにおこなうと骨切除を行い易いが、鼻腔底部の骨内(口蓋骨)から出血することが多い。ボーンソウを用いて、骨切離をおこなう。とくに正中口蓋縫合部はしっかりと離断しておかなければ、骨片を骨折させる際に前方や後方への介達骨折を生じ、思いもよらない方向に骨切り線が入り骨折してしまう。ボーンソウの使用時は鼻腔粘膜の損傷がないよう、細心の注意が必要である。

10. 鼻中隔の離断

鼻中隔は破骨鉗子、ダブルアクション型リューエルなどを用いて離断切除する。

11. 移動骨片の可動化

左右に形成した歯槽突起の骨切除部位より、ライビンガー骨ノミ、チゼルを挿入し口蓋骨の「あたり」を触知する。その後、テシエ型曲骨ノミに入れ替えて軽く槌打すれば、可動予定である前歯部歯槽骨片は前上方に反転され、手圧で可動化する。可動化した小骨片を注意深く反転、伸展しながら、周囲組織との癒着を確認する。鼻柱、上顎骨、正中口蓋縫合部、口蓋歯槽突起、上顎洞隔壁など干渉部を精査する。

12. トリミング

モデルサージェリーの予定位置と対比し、可動化させた前歯部歯槽骨片を後方移動させながら試適し、余剰部分や干渉部分の骨鋭縁や骨辺縁をストレートバー(ラウンド型、エッグ型、バレル型)を用いて削合をおこなう。骨鉗子、ダブルアクション型リューエルを用いると有効な部位もある。術前のモデルサージェリーの予定位置に試適を繰り返しながら、干渉がなく自然に収まるまで繰り返してトリミングをおこなう。

13. 後方移動による歯列弓の変形に対する工夫

後方移動をおこなった上顎前歯部歯槽部骨片ならびに歯列弓と非可動部分である後方臼歯部骨片との側方歯列ステップが生じる場合は、移動骨片の正中口蓋部分の分割をおこなう。分割は口蓋から骨バーやボーンソウを挿入し、軽くスリットを入れ、同部にライビンガーストレートチゼルを挿入し、チゼルを1/4回転させて分割する。可動化した後の分割は極めて困難である。また、過度な分割は中切歯の正中離開や、翼状変位の原因となる。モデルサージェリーの段階、事前診査の段階で分割の要否を判断しておき、術中の判断による、分割の要否の機会はできるだけ少なくするように努めることとしている。

14. 咬合の確認と容貌の経皮的な観察

見た目の観察は、側貌(側方面観)正貌(正面観)鼻柱、鼻尖、鼻翼形態、口唇形態、口唇突出の程度、オトガイ唇溝形態など、エステティックラインを参考にして、後方移動した骨片と見た目のバランスを決定する。さらにモデルサージェリーから作成したスプリントを口腔内に装着し、理想とする歯列関係、咬合関係、被蓋関係を確認する。オーバージェット、オーバーバイト、ガミースマイルの確認をおこなう。

上顎の手術は、上顎が後方移動されたならば、移動に伴って顔面軟部組織の形態は変化する。形態変化が上顎のみにとどまることはないので、症状を把握することが大切である。下顎やオトガイ、鼻柱、鼻尖、下眼瞼の観察は必須である。咬合機能関係、容貌、見た目のバランスが整ったところで骨片の固定をおこなう。

15. 移動骨片の固定

顔貌、咬合両面を理想形態に整えたのち、骨片の固定をおこなう。固定材料には、ポリ乳酸性吸収性プレート(溶けるプレート)チタン製ミニプレート、チタン製マイクロプレート、ステンレス製骨内結紮ワイヤーを使用する。材料の選択は、術中のトリミングの状況や骨片の固定状況によって術中判断をおこなう。

16. 術野の止血、洗浄、縫合

手術野を生理食塩水と消毒液を使用し、局所洗浄をおこなう。鼻腔、副鼻腔、口腔粘膜には削合に伴う骨片が残らないよう注意する。特に上顎洞粘膜の洗浄は重要である。洗浄、消毒が終わり、止血を確認する。トラネキサム酸ガーゼを使用し、完璧な止血をおこなう。縫合は骨膜、筋層、支持靭帯、粘膜の各層縫合をおこなう。縫合糸は吸収糸(溶ける糸)を使用するが、使用する糸の太さと使用する針の湾曲程度と大きさは創部の状態に応じて使い分けている。縫合用針の湾曲は、組織同士の伸展、結合に見合った針の選択が必要である。口もとは可動性に富んだ組織であるがゆえに適度に動き、適度に動かないよう周囲組織と協調する縫合が望まれる。

上顎分節骨切り術の流れ「 Wassmund法 」

Wunderer法と異なる点は、口蓋側の切開、剥離や唇側の切開剥離部位の違いである。抜歯相当部の頬側歯肉歯槽部粘膜並びに、骨膜切開。同部の歯槽骨切離、骨切除。歯槽骨基底部分から、梨状孔外縁までの水平骨切りなどの手術操作はWunderer法と共通している。

Wassmund法の長所は口蓋粘膜や唇側粘膜の栄養血管丙を確保できる点が各種手術書には記載がある。しかしながら、歯槽部分節骨切り術における血液供給パターンは、Axialパターンではなく、Randomパターンであると考えている。そのため、特にこの点の長所と言い難い。欠点は口蓋骨上内方への直視ができないため、可動骨片の修正やトリミングが困難であり、骨片の後上方への移動が難しいとされている。直視できない点は、他の術式でも同様であり、トリミングの可否は手術手技の向上と慣れで克服できる。

1. デザイン

咬合模型を用いたモデルサージェリー、CBCTによる診断、光学模型を用いた手術シミュレーションをおこない移動する範囲、移動によって変化する顔貌、咬合を決定する。顔貌の変化は各種アプリケーションソフトによっていかようにも変化をおこなうことができるが、手術操作によって成しえることと、画像処理のみによってできることのギャップをできる限り少なくし、患者様に伝えることが重要であると考えている。

2. 麻酔

全身麻酔がかかった状態で局所麻酔をおこなうので、まったく痛みを感じない。上顎左右第二小臼歯間の唇側、口蓋側粘膜に対して、歯科用キシロカインカートリッジ(2%リドカイン、1/8万エピネフリン含有)を使用して局所麻酔をおこなう。

3. 抜歯

第一小臼歯(または第二小臼歯)をヘーベル、エレベーター並びに鉗子を用いて抜歯をおこなう。

4. 切開

抜歯した歯の歯冠部周囲唇側歯肉中央部から歯肉唇頬移行部に対して15番メスを用いて垂直切開をおこなう。縦切開は骨切離、骨切除予定位置よりも後方でおこない、骨接合、骨治癒を阻害しないように頬側歯肉、粘膜の切開部分と骨切除後の骨接合部分の位置を一致させないように配慮する。また、縦切開を垂直としないで、後上方におこない口唇動脈の血液流入を頬側軟組織茎として最大限に活用する。

5. 剥離

切開部より、骨膜剥離子、粘膜剥離子(エレバトリウム、ラスパトリウム併用)を挿入し、粘膜骨膜弁として骨切りに必要な術野の展開をおこなう。剥離範囲は、上方を隣在歯の歯根尖より上方とし、内方、近心はトンネル状に剥離を進め、骨膜下に梨状孔を明示する。ガーゼと有鈎攝子をもちいて鈍的な剥離をおこない、梨状孔外縁を明示したら、同部より鼻腔粘膜の一部を剥離する。鼻腔底粘膜も一部剥離をおこなえば、ボーンソウによる粘膜損傷の予防につながる。

6. 骨切離

後方移動に必要な歯槽骨の削除をおこなう。モデルサージェリーによって確認している骨切除予定量の骨切離をおこなう。骨切離には、サジタル、オシレーティング、レシプロ、ストレートバー(リンデマンショート、エッグ、カッティング、ラウンド、フィッシャーなどを併用)を使用する。生理食塩水を注水しながら、唇側、口蓋側歯槽骨を可及的に上顎骨口蓋骨面まで縦に2線の骨切離をおこなう。(骨切除予定部位)縦の骨切離の際には、口蓋側粘膜の損傷を避ける。

7. 骨切離の延長

近遠心で2線の骨切りラインの底部は歯槽骨基底部にとどめ、歯槽骨基底部から梨状孔外縁まではトンネル状に剥離した組織を細谷氏金鈎や細い万能鈎、自在鈎を用いて骨面を露出するとともに、粘膜の保護をおこなう。術野を確保した後、Lindemannバーやラウンドバー、レシプロ、サジタル、オシレーティングなどのボーンソウを用いて歯槽骨基底部から梨状孔外縁まで水平的な骨切離をおこなう。

8. 骨切除

歯槽骨部分の縦の骨切離、梨状孔までの水平骨切離が終了すると、切除予定の唇側、口蓋側の歯槽突起は可動化する。上顎洞粘膜の損傷がないように一塊(エンブロック)として慎重に骨切除する。この操作により、唇側歯槽骨壁、口蓋側歯槽骨壁は切除され、正中口蓋縫合部周囲骨のみが残る。

9. 口蓋骨の離断

口蓋正中縫合部の粘膜骨膜に対して、No15メスを用いて縦のincisionをおこなう。同部より、骨膜剥離子、粘膜剥離子を使用して口蓋粘膜骨膜弁として口蓋正中部分から側方まで剥離を進める。この剥離は口蓋の深さ、湾曲の程度によって困難を極める。また、口蓋粘膜と上顎骨は密着しており、伸展もないため、剥離操作を慎重に行わなければ、思いもよらない方向に粘膜は断裂し、後の縫合を困難にする。縫合が不十分であれば、口蓋粘膜の壊死、可動骨片の壊死をきたす。慎重な剥離が必要であるが、経験も必要である。

上顎口蓋部の骨面を露出させ、口蓋正中縫合部が確認できたなら、口蓋骨の切除予定位置にマーキングをおこなう。縫合部の骨は硬いので、ボーンソウやストレートバーでしっかりと離断しておくことが肝要であるが、回転性切削器具を口蓋から鼻腔底側に向けて挿入し、切削すると鼻腔粘膜を損傷し、大出血をきたすこともある。

経験が浅いうちは、超音波切削器具やピエゾサージェリーを併用すると安全である。また、不完全な離断は、徒手的骨折時に予想外の方向や部位への介達的な骨折を招来する。骨折線の方向によっては、大出血を招来することもあるので、切除予定部位の骨の離断は、両刃マイセルやライビンガー骨ノミ、を用いる。この時も鼻腔粘膜の損傷を起こしてはならない。離断が確認できたならば、ダブルアクション型リューエルやラウンド型ストレートバー、骨バー、エッグ型骨バーを用いて、口蓋部の骨を切除する。鼻腔底部の骨内(口蓋骨)から出血することが多いが状況によって、ボーンワックスを用いて、止血をおこなう。

10. 鼻中隔の切離

鼻柱の切離のため、上口唇正中、前鼻棘粘膜に対して、No15メスを用いて、縦切開をくわえる。同部より、粘膜剥離子、骨膜剥離子を用いて、梨状孔下縁を露出させ、鼻腔底粘膜を骨面から剥離をおこなう。後方移動に必要な範囲で鼻柱、鼻中隔を玉突き鼻中隔マイセルを用いて離断をおこなう。この時点で骨片は可動化するはずであるが、動きが悪い場合は干渉部位を確認し、手術操作を繰り返す。

11. 可動骨片のトリミング

モデルサージェリーの予定位置を確認し、後方移動をおこなう前歯部歯槽骨片を予定位置に試適する。この時、Wunderer法に比べ、ブラインド処置になるため、骨片を動かしながら余剰部分や干渉部分を把握する。ダブルアクション型破骨鉗子(スティール製など)は有益である。術前のモデルサージェリーの予定位置に干渉がなく自然に収まるまでトリミングを繰り返す。

12. 後方移動による歯列弓の変形に対する工夫

歯列、歯列弓、唇側面配列、馬蹄形形態の整形のため、上顎前歯部の正中分割を追加する場合は、唇側鼻腔底から上顎正中部前鼻棘下部に、骨バーやフィッシャーバーを挿入し、スリットを入れ、可動骨片を支えながら、薄型両刃マイセルを用いて分割する。完全な離断は必要ではない。若木骨折様に離断されれば、分割の目的は達成できる。トリミングをしながら、離断状況を確認する。若木骨折のイメージである。

13. 咬合の確認と経皮的な正貌、側貌の観察

ダブルスプリントを口腔内に仮装着する。口腔内の環境として、歯列、咬合、被蓋を確認する。ガミースマイルの改善を希望している場合にはこの時点で頭蓋顔面に対する可動骨片の位置決めを再確認する。美容的な側貌(側方面観)は額、鼻根、鼻背、鼻尖、鼻柱、上口唇の反転、下口唇の外転、オトガイ唇溝などエステティックラインを参考とする。正貌(正面観)では上眼瞼、眉位置、鼻筋、鼻柱、鼻尖、鼻翼形態、口唇、口角形態、口唇突出の程度を基準として、後方移動した骨片と見た目のバランスを決定する。

上顎が後方移動された場合の顔面の各パーツとのバランスを判断する。下顎やオトガイ、鼻柱、鼻尖、眼瞼の観察は必須である。咬合機能関係、容貌、見た目のバランスが整ったところで骨片の固定をおこなう。

14. 後方移動骨片の固定

理想的な形態を保持したら、骨切り移動した上顎骨前歯部骨片の位置決め固定をおこなう。固定材料には、ポリ乳酸(PLLA)吸収性プレート(溶けるプレート)、チタン製ミニプレート、チタン製マイクロプレート、ステンレス製骨内結紮ワイヤーを使用する。材料の選択は、術中の固定状況、トリミング状況によって判断する。

15. 術野の止血、洗浄、縫合

手術野を生理食塩水と消毒液を使用し、局所洗浄をおこなう。鼻腔、副鼻腔、口腔粘膜は削合に伴う骨片が残らないよう注意する。洗浄、消毒が終わり、止血を確認する。カンファークリニックでは、トラネキサム酸ガーゼを使用し、完璧な止血をおこなっている。縫合は骨膜、筋層、支持靭帯、粘膜の各層縫合をおこなう。縫合糸は吸収糸(溶ける糸)を使用するが、使用する糸の太さと使用する針の湾曲、大きさは創部の状態に応じて使い分ける。縫合用針の湾曲や大きさは、組織同士の伸展、結合に見合った針の選択が必要である。

口もとは動きが大きい。開く、閉じる、横に引っ張る、しぼむ、口角を上げる、口角を下げるなど手術後も適度に動き、適度に動かないよう周囲組織と協調する縫合が望まれる。

上顎分節骨切り術の流れ「 Bell法(Downfracture法) 」

口蓋粘膜骨膜弁を茎とし上顎骨の唇側を十分に露出し鼻腔底を直視下に操作できることから、上顎骨前方部(前歯の6本)を後退、上方に移動することができる方法である。多くの顎顔面外科医が用いている術式であり、上顎前突、ガミースマイル改善症例に適応している。

本手術法の長所としては、1)鼻中隔に直接アクセスできるので、鼻中隔軟骨の彎曲を防止できる2)血流豊富な口蓋粘膜骨膜弁なので、骨壊死などの合併症はほとんどない、3)ガミースマイル症状の同時改善が可能である。などが挙げられる。また、欠点として骨切り線と骨膜、粘膜切開線が重なるため、移動骨片がダウンスウィングした場合、患者様の症状や術者の技術力によって、ガミースマイル症状の悪化、口唇閉鎖不全、口唇形態の変形などがおこる。

1. デザイン

咬合模型を術者自身でおこなうモデルサージェリー、CBCTによる診断、CTデータによって作成された光学模型による診察や手術シミュレーションをおこない移動する範囲、移動によって変化する顔貌、術後の咬合状態を確認しながら、神経、血管の走行に留意してデザインをおこなう。

2. 麻酔

全身麻酔の状態で局部麻酔をおこなう。局部麻酔の痛みも全く感じることはない。上顎左右第二小臼歯間の唇側、口蓋側粘膜に対して、歯科用キシロカインカートリッジ(2%リドカイン、1/8万エピネフリン含有)を使用して局所麻酔をおこなう。

3. 抜歯

第一小臼歯(または第二小臼歯)を挺子、ヘーベル、エレベーターまたは小臼歯鉗子を用いて抜歯をおこなう。

4. 切開

左右第一小臼歯間の歯肉唇頬移行部に対して15番メスを用いて水平切開をおこなう。Le Fort型骨切り手術と同様の切開線をイメージする。アングルワイダーを用いるか、介助さに歯肉頬粘膜を左右対称に伸展してもらい、口腔前庭をしっかりと伸展する。縫合時の正中線のマーキングもおこなう。15番メスまたは電気メスを使用して、口腔前庭最深部から外側10mmに左右第一小臼歯間にわたる粘膜切開をおこなう。粘膜切開は粘膜をしっかりと伸展した状態で垂直におこない、切り込まない。切開面から上唇挙筋群が透けて見えたら、ガーゼを用いて手指で切開面の剥離伸展すると、口輪筋や上唇挙筋群が確認できる。骨膜に至るまではガーゼや骨膜剥離子をもちいて可及的に骨膜面を露出させたのち、上顎骨前壁に垂直となるよう15番メスを用いて骨膜切開をおこなう。骨膜切開は骨面に対して垂直におこなう。粘膜の切開部分と骨切離部分の位置を一致させないように配慮する。

5. 剥離

骨膜切開の後、唇側粘膜骨膜弁として剥離、形成し梨状孔下縁、外縁、上顎骨体を露出する。抜歯部分の歯冠周囲歯肉に水平切開が延長してしまうことがあるが、できる限り温存し、後の縫合時に活用する。梨状口下縁から鼻腔底粘膜を剥離し、鼻中隔から鼻粘膜も剥離をおこなう。この操作は直視下におこなえるので手術操作が簡易である。

6. 骨切り、骨切除

切除予定位置にマーキングをおこなったうえで、梨状口から後方に向けて上顎骨の水平骨切離をおこなう。使用する機械は、サジタル、オシレーティング、レシプロ、ストレートバーを使用する。超音波切削器具も有益である。つづけて両側歯槽骨、歯槽突起の骨切り、骨切除をおこなう。骨切除は後方移動に必要な範囲にとどめる。歯槽部の骨切り、骨切除は歯槽部歯肉、粘膜はトンネル状に剥離して骨切りをすることも可能であるが、手術操作が煩雑になり、視野の確保が悪い場合は切開して直視下の骨切離をおこなった方が手術時間の短縮の観点から有益である。 この時点では骨切離、可動化させるために概形成的に骨切離を進める。

7. 鼻中隔の切離

鼻中隔切離は玉突き鼻中隔マイセルを用いる。鼻中隔が長い場合は鼻柱下端の切除形成をおこなう。ダブルアクション型リューエルを用いることも可能である。

8. 口蓋骨の切離

硬口蓋の骨切離、骨切除は口蓋に触診用に指を添え、口蓋粘膜の損傷を避ける。手指の代わりに、マレアブル・リトラクターで口蓋粘膜を保護することもできる。口蓋正中縫合の硬さによって、骨バーまたはダブルアクション型破骨鉗子を用いて口蓋骨を切離、切除をおこなう。この段階での骨切除は上顎骨前方部を指で下方に骨折(Dawnfracture)できれば十分であり、完全な骨切除は不要である。

9. トリミング

すべての骨切り操作が終了したら、下方へダウンスウィングするように徒手的骨折をおこなうと、上顎前歯部骨片は下内方に可動化する。術野は正面から直視できるので、モデルサージェリーの骨の後方移動量に合わせたトリミングを行なう。トリミングにはラウンドバーやリューエル、超音波切削器具、ピエゾサージェリーを使用する。鼻腔底、歯槽突起、上顎洞前壁、硬口蓋、鼻柱に干渉がないようトリミングをおこなう。鼻中隔の変形や鼻翼の変形がないかもこの段階で確認をおこない、必要に応じて修正をおこなう。

10. 咬合の確認と経皮的な正貌、側貌の観察

移動骨片を予定位置に移動し、モデルサージェリー上で作成した適性咬合用スプリントを装着し上下の咬合が最適であることを確認する。口腔内の確認事項として、歯列、咬合、被蓋関係である。前歯部被蓋関係が深い場合(ディープバイト)症例では、骨片の上方移動をおこないガミースマイルの改善も可能である。この時点で位置決めをおこない再確認する。見た目改善としては経皮的な観察をおこなう。

側貌(側方面観)の確認事項は、額、鼻根、鼻背、鼻尖、鼻柱、上口唇の反転、下口唇の外転、オトガイ唇溝などE-Line、イーライン、エステティックラインを参考とする。正貌(正面観)では上眼瞼、眉位置、鼻筋、鼻柱、鼻尖、鼻翼形態、口唇、口角形態、口唇突出の程度を基準として、後方移動した骨片と見た目のバランスを決定する。上顎が後方移動された場合の顔面の各パーツとのバランスを判断する。下顎やオトガイ、鼻柱、鼻尖、眼瞼の観察は必須である。咬合機能関係、容貌、見た目のバランスが整ったところで骨片の固定をおこなう

11. 後方移動骨片の固定

理想とする予定形態に骨片を保持したら、位置決め固定をおこなう。固定材料には、ポリ乳酸(PLLA)吸収性プレート(溶けるプレート)、チタン製ミニプレート、チタン製マイクロプレート、ステンレス製骨内結紮ワイヤーを使用する。材料の選択は、術中のトリミング状況や固定状況によって判断する。

12. 術野の止血、洗浄、縫合

手術野の清潔を確保するめ、生理食塩水と消毒液を使用し、局所洗浄をおこなう。鼻腔、副鼻腔、口腔粘膜の削合に伴う骨片が残らないよう注意する。洗浄、消毒が終わり、止血を確認する。トラネキサム酸ガーゼやボスミンガーゼを使用し、完璧な止血をおこなう。縫合は骨膜、筋層、支持靭帯、粘膜の各層縫合をおこなう。縫合糸は吸収糸(溶ける糸)絹糸(シルク)ナイロンを使用する。吸収糸はPDO,PCL,PLLAなどを創部の状態に応じて選択する。

さらに使用する糸の太さと使用する針の湾曲、大きさは創部の状態に応じて使い分ける。縫合用針の湾曲や大きさは、組織同士の伸展、結合に見合った針の選択が必要である。口もとは動きが大きい。開く、閉じる、横に引っ張る、しぼむ、口角を上げる、口角を下げるなど手術後も適度に動き、適度に動かないよう周囲組織と協調する縫合が望まれる。

手術後について
創部の圧迫 手術日の翌日までテーピング圧迫をおこないます。手術日の翌日にご自身で除去して頂きます。
術後の通院 定期的な通院は不要です。患者様のご希望により、診察をしております。
抜糸 溶ける糸を使用します。手術後1か月ほどで自然になくなりますので、ご来院は不要です。
洗顔 圧迫用テーピング部位以外は当日より可能です。
入浴 軽めの入浴は当日から可能です。シャワーも当日から可能です。
メイク テーピング除去後、手術の翌日から可能です。
その他 手術後7日間は、喫煙をお控えください。

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